2014年11月23日日曜日

映画『はての島のまつりごと』 自衛隊配備闘争も民俗学的視点で捉える


『はての島のまつりごと』という映画を見た。

与那国島の2011年からの3年間を切り取った映画。監督は、土井鮎太さん。
まつりごととは、「祭り事」であり「政」である。二つのまつりごとが時系列で並ぶ。

晴れた日には東崎から台湾が見えるという与那国島では、ちょうど自衛隊配備が持ち上がっていた。人口1500人の町に、150人の自衛官(沿岸警備隊)と、レーダー基地を作るというのだ。地権者は、牧場主1人だけ。しかも島の再生をかけて、町が配備に手を上げたといういきさつが分かっていくが、納得しない島民が反対運動をしている。
島を半分に割っての対立なのだが、どうも移住者は配備反対派が多いらしい。虫好きが高じてとか、陶芸をやりたいからとか、自然環境に惹かれての移住だからだろう。
しかし、500筆を越える住民投票請求の署名簿を町議会に提出しても否決される。最後は町長選に500550で反対派が負けて、2014年、自衛隊の工事がはじまる。その現場近くを、牛や馬が歩いている。ついさっきまでは、天然芝の牧場を歩いていたのに。

自衛隊の誘致の賛否に島の人々の生活がからみ、未来の島の担い手である子どもたちの現実が語られるなかで、なぜ自衛隊を誘致しなければならないと思ったのかを、島民たちの会話で示していく。それは、どこにでもある過疎の問題であった。自衛隊が来れば人が増え、観光客も来て物が動く。職場も出来るなど。

日常を切り取る中で、もう一つの祭り事、島の人々と神との魂の交流が描かていく。中でも、神が島に降りてくるという25日間の「マチリ」が丁寧に紹介される。

土井鮎太監督

あゝこの監督は、中立でいようとしているんだと思う。ところが、上映後の彼の話しでは、那覇での上映会である女性に、「あなたは、反対なのか、賛成なのか」と、つめよられたと。彼はそのどれでもなく、中立でもないという。ただ目の前に起きていることを、ありのままに撮っただけと。しかし彼がそうありたいと思っても、画面には島民の怒りが静かに流れていることは変わらない。だが、何か落ち着かない。この定まらなさはなんだろうと、考えながら家路についた。これを書きながら、自衛隊配備闘争までも民俗学的視点(この言葉の使い方が正しいか、よくわからないが)から捉えている、その違和感なんだと気づく。良い悪いを越えた、事象としての反対運動をそこにある生活としてあらわしているのだ。しかもそれは、あとでジワリと効いてくるように思う。

最後の牛や馬の親子とシャベルカーとむき出しの土、土で汚れた舗装道路が、島の将来を暗示していると、強く感じた。

それにしても、140分というのは、長すぎる。細部を大切にしているとは思うが、30分くらいはカット出来るのではと正直、思った。

2014年11月12日水曜日

お米に黒い斑点があるのは害がありますか? 斑点米(着色米)について考える

お米に黒い点々があって気持ち悪い? 

これは、殺虫剤を使っていない勲章です。

農薬を一切撒いていない田んぼ


 「斑点米」という言葉の意味をご存知ですか?これは、着色している米粒のことをいいます。現在、お米屋さんから購入する米には、ほとんど見られません。でも、有機農家などから直接送ってもらっている人は、一部に黒い点がついている米を見たことがあるでしょう。あの斑点は、カメムシのまだ柔らかい米粒の澱粉を吸い上げた跡です。

斑点米って何?


目視で等級を決めます

 斑点米の食味テストをしたグループがあり、その結果、全く食味には影響がなかったというものでした。また毒性もないので、何ら問題がありません。
 ところで、消費者と全く関係なく、「農産物検査法」で規定されているお米の買取の際の等級があります。それを決めるのは、形や水分の他、被害粒、死米、着色粒、異種穀粒、異物です。斑点米は、その中の着色粒に含まれます。
 1等米は、この着色粒(およそ1mm以下の斑点等はカウントしない)が1000粒に1粒まで、2等米は3粒まで、3等米は7粒までと決められています(輸入米の着色粒は、100粒に1粒。等級とは関係なく、合否だけ) 。買取価格は、各県の全農(JA)が決めていて、2等米になると秋田県は600/60kg安くなります。



農産物規格規定















JAの言い分は理解できない事だらけ

 このカメムシを防除するのに使われる農薬は2回散布するとして、約300/60kg。加えて無人ヘリの料金がかかります。大潟村の場合約113/60kgになります。実際に斑点米を除去するとロスが出ますが、その損は、着色粒1粒を取り除くのに、0.25粒巻き添えになるというものです。つまり、お米が11000/60kgの場合で59.4/60kgだけです。買取価格の差額を大きくしておけばおくほど、農薬が売れる仕組みになっているのです。この価格は、国も県も関与せず、地元のJA(農協)内部で決めているのです。ここら辺を見ると、「農薬を売りたい」臭がプンプンします。


 米価が変動して特に今年のように安くなっても、この等級差による買取価格が変わらない矛盾を、秋田の今野茂樹さんが秋田県水田総合利用課に問いただしたところ、課長が「等級間格差は説明可能な根拠を持つべきと全農に伝える」ということでしたが、全農は、「秋田県だけで判断できる問題ではない」と、もともと県別に決めているのに、歯切れの悪い答えが返ってきたそうです。


米は白くなくっちゃという人のために

 どうしても黒い粒はいやという消費者のためには、色彩選別機にかけて除去すれば、何の問題もない1等米になります(それも無駄と思いますが)。当然JAはそれにかけて、着色粒を除去して売ります。この機械も、小型の手軽価格のが出てきましたし、小米や他の植物の種や小石を除去する篩(ふるい)のような機械にかけると、生育が悪くなる斑点米は取り除けるそうです。
 つまり、農村地帯に行くと見かける、石取りセンサー付き無人精米所でもある程度取れるということでしょう。
 消費者のあなたは、ピカピカの真っ白のお米を食べるために(斑点米も炊けばほとんど気にならなくなる)、ネオニコチノイド農薬を散布してもらいたいですか?


 ネオニコチノイド系農薬の各国の規制

 殺虫剤として使われているネオニコチノイド系農薬とは、猛毒の青酸カリと同じCN基を持っているものもある上、名前から想像できるように、タバコに含まれる毒物のニコチンと似た構造を持ち、更に毒性を強めた化学合成物質と言えます。構造式によって少しずつ効能が違い、分解途上の方が毒性が強まるものなど、毒性も違うようですが、ヒプロニルを含め、浸透性農薬としてくくられています。
 
 この種類の薬剤は、1991年頃から徐々に認可され、2002年には水田でよく使わるクロチアニジンが認可さています。
 長野市の養蜂家の依田清二さんは、被害が顕著になったのが、2007年だったといいます。2005年ころから岩手県の養蜂家の蜂群がどんどん死に、大問題になってきました。依田さんのところでも、影響が出始めました。
ウィルス説、細菌説、ストレス説などがありましたが、ネオニコチノイド系農薬が、原因だと言われるようになりました。
 では何故、ネオニコチノイド系農薬がミツバチの大量死を引き起こすかというと、この農薬が、中枢数神経系に作用するということから来ています。この農薬は、浸透性でかつ残効性であるので、苗床に粒剤を撒き、次はカメムシ被害に遭う穂が出る頃に撒きます。この頃は暑いので、ミツバチは巣を冷やすために(冷やさないと蜂の子が死ぬ)水を巣に運ぶのです。その格好の水源が田んぼなんです。体内に水を吸い込んで運ぶため、まず中枢神経をやらて巣に戻れなくなり、もどれてもそこで死ぬことになるのです。
また、蜂の子も毒水を飲んだりもするので、死ぬのです。

 ジャーナリストの岡田幹治さんは、海外の事情を紹介しました。それによると、欧州などでも、ミツバチだけでなく、野鳥の減少現象などから、この農薬の毒性に気がついてきました。EU は、2013年の12月から、ミツバチが採蜜する作物への3種類のネオニコチノイド系農薬の使用を2年間制限すると発表し、その間に毒性検査をするというもの。
 アメリカでは、4種類のネオニコチノイド系農薬の花粉媒介昆虫のいるところでの使用禁止をラベルに明示することを決めました。オバマも「花粉媒介昆虫の健康促進戦略」を打ち出しています。そのほか、韓国、オランダでも規制が進んでいます。

生態系への影響も明らか

 浸透性農薬タスクフォース(TFSP)が今年の8月に発表した「世界的総合評価(WIA)でも、土壌や水中に長期間残留し、ミツバチだけでなく、ミミズや淡水貝などの無脊椎動物、鳥や微生物にも影響するといっています。
 もちろん人間もその範疇にあり、中枢神経に作用するので、特に胎児や新生児期に曝露すると、発達障害などになる可能性があります。日本では、脳学者の黒田洋一郎さんや平久美子さんなどの研究が進んでいて、致死性は、有機リン系と同等かそれ以上、散布された食品(果物などをたくさん食べる)を連続的に食べると中毒を起こすこともあります。日本でも果樹園などでネオニコチノイド系農薬を散布した直後に、その近くの保育園や小学校などで、子どもたちが落ち着かなくなって暴れる、体調を崩す、モノ忘れが激しくなるなどと発達障害的症状を表すことが認めらています。

舘野さんの田んぼ

 

▼殺虫剤を撒くとどうなるか なんと害虫が増える

 さて、みなさん、それでもカメムシ防除に薬を撒きたいですか。
 栃木の舘野廣幸さんは、農薬も化学肥料も使わないコメ農家です。彼の田んぼには、トンボも、カエルも、蜘蛛も、よくわからない(私が)虫がたくさんいます。でもカメムシはあまりいませんと、彼は言います。私が見たときは、トンボがたくさんいました。
農薬(殺虫剤)を撒くと、カメムシが増えるというのですよ。
なぜカメムシが増えるかと言うと、殺虫剤は、害虫だけに効果があるのではなく、ただの虫にも、益虫にも効果があるし、虫を食べる小鳥やカエルなどの動物にも効果がある、つまり、皆殺しにするのです。ところが、害虫は、少し生き残ったものが、性懲りもなく、薬剤耐性をもって繁殖してきます。
 益虫は、実は散布された薬剤で死ぬだけでなく、その薬剤に汚染された虫を食べることで、害虫より汚染度が高くなり、絶滅の坂を転がり落ちていくというわけです。ここにも、生物連鎖の法則がみられます。「だから……」と、舘野さんは声を高くして言います。「農薬を撒きたいという誘惑にかられることはよくわかります。でも、麻薬と同じで、一回でも撒いたら、負の連鎖が始まります。我慢して撒かないことです」と。難しいけど、やってみる価値ありますね。
 またこうも言います。「お前のところが撒かないから、虫が増える」と。でも「そっちが撒くから、うちの田んぼに逃げてくる」と。さて、どちらでしようか。

 いずれにせよ、危険な農薬を口に入れないためにも、斑点米は、農薬がかかっていない指標だと思って、食べてください。
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2014-11-05 斑点米農薬防除をやめて安全な米とミツバチを守ろう 市民集会――危険なネオニコチノイド農薬とコメ流通のしくみを知る」を参考に書きました。

この集まりは、農水省は今年620日にミツバチ被害に関する報告と方針の中で、斑点米カメムシ防除に使用されたネオニコチノイド系など農薬が、ミツバチの大量死の原因になっていることを認めました。
それを受けて、今回農水省に「ミツバチ被害の原因となる斑点米カメムシ防除のための農薬使用を止め、その使用を強要する農産物検査法・植物防疫法の見直しを求める要望」を提出しました。その報告会です。



カメムシの画像  カメムシの種類が多く、全ての種類で害虫どうかが、はっきりしていない。
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A0%E3%82%B7+%E7%A8%AE%E9%A1%9E&rlz=1C1CHPM_jaJP408&espv=2&biw=1100&bih=597&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=3P5iVNuMI6XdmAWus4HgCw&ved=0CAYQ_AUoAQ#facrc=_&imgdii=_&imgrc=k0DVdnfxG90rGM%253A%3BPK36myy8DRvmkM%3Bhttp%253A%252F%252Fhikyou.sakura.ne.jp%252Fv2%252F%2525E3%252582%2525AB%2525E3%252583%2525A1%2525E3%252583%2525A0%2525E3%252582%2525B7%2525E3%252581%2525AF%2525E3%252580%252580%2525E9%2525A3%25259F%2525E6%252596%252599%2525E5%252580%252589%2525E3%252581%2525AB%2525E3%252580%252580%2525E5%2525B1%252585%2525E3%252582%252592%2525E6%2525A7%25258B%2525E3%252581%252588A.jpg%3Bhttp%253A%252F%252Fhikyou.sakura.ne.jp%252Fv2%252F2011%252F10%252Fpost_2896.html%3B400%3B301


                                                                                                                                                                                                                  

【映画紹介】『日本と原発』原発のどこがどう問題か、がわかる(監督:河合弘之、構成:海渡雄一、制作協力:木村結)

映画「日本と原発」(監督:河合弘之、構成:海渡雄一、制作協力:木村結)を、
早速、初日に観てきました。



東海第2原発運転差止訴訟のキックオフ集会に参加したとき、河合弘之弁護士は、「僕は日本中のすべての原発訴訟の弁護をする」とおっしゃっていました。彼は、辣腕の企業弁護士で、負けたことがないと言われていますが、こと、原発訴訟では負け続けているとか。もちろん市民側に立ってのことですが。
そんな時に起こった3.11事件。今度こそ勝つ訴訟をしたい、弁護士として生きてきたことへの感謝を仕事を通して表したいと思ったと聞きました。その言葉を違えず、彼は「脱原発弁護団全国連絡会」を作り、精力的に活動しています。
その河合さんがこのまま弁護士の枠に収まっていては埒があかない、もっと違うやり方で国民の総意にしていかなければと、原発の全てが分かる映画を作ろうと決心して、出来た映画です。
HPより映画の1場面

原発事故の実態はもとより、原子炉とは、原発と経済、安全性、そして原発に変わるエネルギーなど、原発の問題の全てが情緒に流れることなく、かと言って理屈っぽくなく、微妙なバランスの中に語られています。そして、全編に河合・海渡両弁護士のお人柄が通奏低音のように流れているのです。
浪江町の馬場有町長へのインタビューは、町民への愛情(これが行政マンの一番大切なことと、思っている)と、東電や国に対する怒りにあふれ、思わず私も涙したのでした。


 川内原発のことを思いながら、九州経済が大事なのか、人の生命なのかと改めて悔しく、思わず九州中の知事と役人をこの場につれて来て一緒に観たいと拳を握っていました。
HPより

ぜひ、あちこちで上映会ができるといいと思います。
 河合さんは、初日の挨拶で、「費用が出せないなら、相談に乗る」とまで発言に、この映画と、原発訴訟にかける並々ならない思いを感じたのです。
初日舞台挨拶 海渡雄一さん、飯田哲也さん、河合弘之さん



チラシには河合さんの次の言葉が載っています。
「裁判は、たったひとりでも正義をかけて闘える民主主義社会の安全弁みたいなものだ。

だから、僕はひとりでも闘う。でも、それだけじゃ、みんなに伝わらない。

ひとりでも多くの人に真実を伝えるには、やはり、映画しかない」。



監督:河合弘之 構成・監修:海渡雄一 制作協力:木村結 
制作:Kプロジェクト
http://www.nihontogenpatsu.com/

                                                笠原眞弓



2014年11月7日金曜日

『汝 多くの戦友たち』DVD完成


 宅配便が届いた。『汝 多くの戦友たち』のDVDだ。1956年に当時の東ドイツが製作し、その後日本に持ち込まれたが、上映までも大変だった。映倫に引っかかってずたずたにされるところを裁判に持ち込んでなんとか救い出した。
 しかし、何ヶ所か日本側で手を入れて61年に上映できたというもの(時の総評が尽力)第1次と2次の世界大戦がどうして起きたか、「戦争反対」の市民の声を、当時の皇帝カイゼルとドイツの独占資本主義が結び、戦争を起こしたことを検証している。
『13階段』にも『我が闘争』にも描かれなかった真実。それがあったが故に映倫で止めらたともいわれているように、「戦争はなぜ起こるのか」の本質を暴いていく。
当時上映はされたが、その後長くお蔵入りしていた。

 それを見つけ出して「戦争をしたい首相」のもとにいる今こそ見るべきではないかと、DVD化に取り組む。痛んだフィルムを丹念に修復して(修復は、有原誠治さん)何ヶ月もかけ、試写しては直しと、やっと発売された。エンゲルスの演説場面からはじまり、戦闘場面も含め、全編実写で構成さている稀有なドキュメンタリーである。

 私の友だちのTさんも、ドイツ語で協力した。たくさんの人が、力を出しあったと聞く。
(全く関係ないが、エンゲルスって金持ちなんだと、複雑な気持ちで思った)
 
共同映画03-5466-2311へ。5000円。 http://nanjiookuno.seesaa.net/


【映画に挿入さた詩】(レイバーネットTV72号2014/6/25朗読)



汝 多くの戦友よ!  
「汝 多くの戦友たち」より・作者不詳

ふるさとの谷よ 山よ 森よ

ドイツよ わがドイツよ

いつになったらもとの平和な姿に帰るのか?

そして 

街をつくり 石炭を掘り 家を建てる

ドイツの労働者よ 
お前たちは 
誰のために機械を動かし
誰がその銃をとるのか?
誰がそれをきめ 
どこにそれを送るのか?

命令するのは誰か?「撃て」と
そこでお前は何をしているのか?
その腕と すぐれた力で
めぐまれた豊かな才能で
お前はどんなことでもできる筈だ
お前はどんなものでも
つくることができる筈だ

お前は忘れてしまったのか?
お前の労働がみのらせたものを
お前が敵に武器を与えたのだと
いうことを
それがどんなにおそろしい結果を
もたらしたかを……
二十年の歳月は余りにも永すぎたのか?

みずからの敵に
どうしてそんなに忠実なのか?
汝多くの戦友よ

2014年11月5日水曜日

第11回東京平和映画祭報告 情報は自ら求めなければ得られない

情報は自ら求めなければ得られない

11回東京平和映画祭報告(2014111)


 第11回東京平和映画祭が400人を超える方々をお迎えして、終えることができました。
今年のテーマは「どこへ向かうの 日本? もう無関心ではいられない」。
 原発事故1本、秘密保護法、軍備などの国家権力4本、食の問題1本と3つのテーマに大きく括られ、6本の映画が上映された。

 ・朝からハードに

 レイバーネット映画祭でも上映された『A2-B-C』、『レーン・宮沢事件』も好評だった。特に『レーン・宮沢事件』は、秘密保護法の施行日程が秒読みに入ったこの時期、我が事として受け止められたようだ。ビデオプレスの松原明さんは、「スパイ事件の怖さは、活動家でも党員でもない、普通の人が理由もなく捕まることで、それだけに本人も周りもダメージが大きい」と話された。


・飛び入り「制服向上委員会」

写真撮りますと言ったらねすぐポーズるプロです。

 ランチ休憩には、「高校生以下無料招待」でいらしていただいた制服向上委員会の4人のメンバーが、飛び入りで登場。結構深刻な歌を、明るく元気に歌う彼女たち、「新聞を読んだり、公演先でいろいろ教えていただいている」など、ひとりひとりが自分の言葉で話す姿は、いつもながらなんともいえず嬉しくなる。


・午後も目を見開いて耳を澄まして

ファルージャの監督伊藤めぐみさん

 10年前の辺野古の闘い『海にすわる』は、今も激しく続く攻防戦をしっかりと捉えていた。『日本はイラクで戦争をした』『ファルージャ』は、イラクに自衛隊を派遣したということは究極的に日本の石油を有利に確保するためであったこと、高遠菜穂子さん、今井紀明さんのその後の生き方を追っている。

 三上智恵さん、高遠菜穂子さんの講演は、それぞに興味深くかった。
 三上さんは「いま」の沖縄そして沖縄から見た本土を照らし出してのお話、高遠さんはイスラム国が台頭した現在のイラクについて語った。
 お二人が共通して語ったのは、「情報格差」だった。三上さんは、毎日カメラをもって撮影していたけれど、県内では「今日の辺野古」コーナーでオンエアーしていたものの、県外では全く放送されない。それで30分、45分にまとめて深夜枠で流すなど工夫したが、見た人は本当に少なくて歯がゆい。『標的の村』を映画にして、思いもかけず多くの人にみてもらえたので、今は映画を作ろうと毎日撮影をしているという。
 一方、高遠さんも、「国内にいると、世界のことが何も伝わってこない」とのことで、日本の集団的自衛権を話題にする場合、日本なら政治家の顔くらいだが、彼女が海外で目にするテレビや新聞では、繰り返し自衛隊の訓練の様子などが映し出さるということだった。

 

・第3次世界大戦は始まっている!!!

高遠菜穂子さん

 与えられる情報だけを鵜呑みにしていると、本当のものは見えてこない。つまり、情報は自ら求めていかなければ得られないと強調された。続けて「今、すでに第3次世界大戦に突入している」と。「これまでの世界大戦とは違う形で、世界中で紛争が起きている。その根っこにあるのは1次と2次と同じ、資源など大国の利益追求」との言葉に戦慄をおぼえたのでした。


・この事実を映像として見つめる

『日本はイラクで戦争をした』の中で、イラクで自衛官が機関銃を抱えてオランダの兵士と街中のパトロールをしている姿は、衝撃的だった。当時、テレビや新聞などで、このような映像を見なかった気がする。そこで「武器のあるところ全て戦場になる」ということを思えば、これは集団的自衛権の実態を知る上で外せない映像と、今回プログラムに入れたのだった。


・今日から世界は変えられる

 最後に上映された『食の選択』は、私たちが、何をどう選んでいったらいいかを示したもので、今すぐにでもはじめられる提案にあふていた。国をあるいは世界を相手に終わりの見えない闘いを日々していかなければならない私たちに、今日からでも取り組める提案は、私たちをホッとさせ、帰宅の足取りも軽くなったのだった。

フィナーレ



笠原眞弓